進む：第3章
・平城（39°14' 19.66"N 125°54' 15.89"E）ー Washington（38°53' 51.61"N 77° 00 ' 11.４８"W）
間の射距離 = 11, 0 51 [㎞」
| 図２－１ 北朝鮮平城（ピョンソン）から Washington に向かう弾道 |
|
|
・上図に示した弾道は、平城 から Washingtong に運搬できる最も重い質量の弾頭を持ったミサイルの弾道である。
・この弾道は、弾頭質量当たりの運搬エネルギーが最少になるので、MET（Minium Energy Trajectory; 最少エネルギー弾道）と呼ばれる。実際には、このクリティカルに定められた MET の上下側にある幅をもって、弾道が設定されるので、その弾道を、英語の文献等では、「標準弾道」（Standard Trajectory）と呼んでいる。
・日本の新聞を含むマスコミは、弾道ミサイルの弾道を「Lofted」と「通常」の弾道に２分しているが、MET より上側の弾道は、全て「Lofted」、下側の弾道は全て「Depressed」弾道である。
・上図の弾道の最大弾道高は、1, 089 [㎞]、飛翔時間は、2, 114 [s] （35 分 14 秒）である。
1.2 弾頭質量 1000 ㎏ をもって Washigton に向かう「火星15」の弾道
・弾頭質量 1000 ㎏ の「火星15」の最大射程 13, 000 ㎞ を超える。これに対して、平城ーWashington 間の射距離（11, 034 [㎞]）は短いので、射程上にゆとりがある。
・このゆとりによって、弾道を、MET の上下に打ち分けることができる。その様子を以下のグラフに示す。最初に、弾道の特性を示しておきます。
| 表２－１ Washington に向かう弾頭1000 ㎏の弾道特性 | |||||
| № | 弾道の型 | 弾頭質量 ㎏ |
最大弾道高 ㎞ |
飛翔時間 s |
無拘束最大射程 ㎞（注） |
| ① | Lofted | 1,000 | 1,834 | 2,489 | 13,063 |
| ② | EMT | 1,134 | 1,089 | 2,114 | 11,028 |
| ③ | Depressed | 1,000 | 912 | 2,036 | 13,063 |
（注）到達目標を示さずに、射撃方位（Azimuth）のみを示して発射したときの最大射程。
| 図２－２ WA.DC に向かう ３態の弾道（弾道高度：射距離） |
 |
| 図２－３ WA.DC に向かう ３態の弾道（弾道高度：飛翔時間） |
 |
| 図２－４ WA.DC に向かう ３態の弾道（飛翔速度：飛翔時間） |
 |
| 図２－５ WA.DC に向かう ３態の弾道（高度差を強調して表示） |
 |
| 図２－６ 終末弾道： 弾道高対射程 |
 |
| 図２－７ 終末弾道：飛翔速度・加速度（減速） |
 |
| 表２－２ 終末弾道の特性 | ||||||
| グラフ色 | 突入角度 deg |
再突入速度 ㎞/s |
最大速度 ㎞/s |
着 速 ㎞/s |
最大減速度 G |
|
|
26.08 | 7.233 |
7.290 (at 51.5 ㎞) |
0.610 |
80.1 (at 10.2 ㎞） |
|
|
17.37 | 7.199 |
7.253 (at 50.4 ㎞) |
0.384 |
52.4 (at 11.3 ㎞） |
|
|
14.44 | 7.260 |
7.310 (at 56.8 ㎞) |
0.298 |
44.1 (at 13.3 ㎞） |
|
| ( ) 内の数値は弾道高度 | ||||||
・高度100 ㎞ で再突入した弾頭は、21 マッハ付近から徐々に速度を増し、空気抗力により高度 50 ㎞ 付近でピークに達し、以降、急速に減少に転じ着弾時には、1 マッハ前後になる。
・減速度は、 弾頭が空気中を高速に飛翔する場合に受ける動圧 （空気密度を ρ , 速度を v として, ρv2/2）に比例し、結果としてグラフに示すように、高度 10 [㎞] 付近で、44 - 80 [G] の大きな減速度を生じている。
・THAAD の迎撃可能空域は、高度上 40 - 150 [㎞]、射程上 200 [㎞]であるが、迎撃ミサル自体の速度が 2500 [m/s]（約 7 マッハ）で、速度上対応可能な標的機の速度は 14 マッハといわれているので、火星-15 に対応できない。
進む：第3章