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「火星14」の射程を分析する

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第2章 ブースト段と再突入段を含んだ「火星14」の全弾道

  「火星14」は、発射されて時点で、2段液体ロケットであることがわかっていたが、その細部は不明であったが、2017/07/10、「38 NORTH」が、インタネットのサイト上に  "What is True and Not True About North Korea's Hwasong-14 ICBM: A Technical Evaluation" と題する記事発表し、火星14の形状寸法の推定値を示した。

 ここでは、示された第1段及び第2段の推進装置(それぞれ、燃料・酸化剤タンク及びエンジンを含む構造体から構成されている)の形状寸法からタンク容積を計算して、推進剤の比重から、推進剤の質量を求めた。

 

1 推進剤及び機体の質量算定

   タンク容積は、第1段:23.04㎥ 、第2段:2.72

 酸化剤:四酸化二窒素、燃料:A-50(ヒドラジン・UDMH混合)として、その平均比重 1.2 を、それぞれの容積に乗じて、

   推進剤質量は、第1段:27.65 ton、第2段:3.27 ton

 推進剤搭載率(段の推進剤質量/段の全質量)を、0.9 と見積もると、

   各段の質量は、第1段:30.72 ton、第2段:3.63 ton 

 小数低下を、四捨五入すると、

   第1段31ton、第2段4 ton、全質量35 ton

 ()「推進剤搭載率」を、0.85 及び 0.80 と見積もれば、全質量は、それぞれ、36 ton 及び 39 ton になる。

 

2 弾道計算のためのプログラム入力値の設定

  推進剤の比推力Isp)は、真空中で、305 [s]、海面高度で240[s](真空中の78%)、燃焼秒時Burn Time)は、平均推力(トン)が燃焼初期の総質量(トン)の2倍程度になるように設定する。ここでは、第1段100 秒、第2段110 秒とする。 設定値の細部は下表のとおりである。

表2-1 プログラム入力設定値
  Parameters Unit Stage 1 Stage 2
  Initial Velocity m/s 0 -
  Delay Before Ignition s 0 0
  Burn Time s 100 110
  Stage Dry Weight (* kg 3,100 400
  Stage Fueled Weight kg 27,900 3,600
  Isp Stage s 240 305
  Stage Diameter m 1.75 1.75

            (*)燃焼終了後の空虚重量

  発射位置:舞水端里(N 40°51' 21"、E 129°39' 58") 発射方位:44°30’(北東)

  Payload Mass(弾頭質量)500、600、700 、・・・、1200 [㎏]、弾頭径:1.3 [m]

 

3 ペイロード対最大射程・飛翔時間、バーンアウト速度・最大弾道高

 

図2-1 ペイロード対 最大射程・飛翔時間
Hwasong-14_PL_Rn_Tf

 

図2-2 ペイロード対 バーンアウト速度・最大弾道高
Hwasong-14_PL_Vo_Alt

 

 4 最大射程分析のための「エネルギー最少弾道(EMT)」からのアプローチ手法の有効性の検証

 第1章で、EMTを使って、「火星14」の発射弾道の初速を推定し、そこから、試験に使われた「火星14」の最大射程を 6,500 ±500 [㎞] と推定した。その様子を下図のグラフに示す。

図2-3 エネルギー最少弾道(EMT)の有効性の検証
Hwasong-14_Rn_Vo
    記号「× 〇 ◎ △」は、第1章の「表2 最大射程の分析結果」に対応

  EMTの初速(ブースト段を有する弾道のバーンアウト速度に相当)は、図に示したように、同一射程の通常の弾道より大きくなる。この例では、430 [m/s] 大きくなっているが、ミドコース(中間)弾道で比較的大きく速度が落ちるので、全弾道を通した平均速度は、あまり変わらない。これによって、「エネルギー最少弾道」によるアプローチの有効性が保証されるのである。

 実は、「エネルギー最少弾道」の表が計算されていて、弾道の初速が EMT から推定できれば、立ちどころに、最大射程がわかります。その表の一部を示します。

表2-2  エネルギ最少弾道(EMT)
最大射程
[km]
最大弾道高
 [km]
飛翔時間
[s]
初速度
{km/s]
中点速度
  [km/s}
ロフト角
[deg]
6000 1,098 1394 6.249 4.544 31.51
6100 1,109 1409 6.282 4.572 31.29
6200 1,120 1424 6.314 4.600 31.06
6300 1,130 1439 6.346 4.628 30.84
6400 1,140 1454 6.377 4.655 30.61
6500 1,150 1469 6.407 4.682 30.39
6600 1,159 1483 6.437 4.709 30.16
6700 1,169 1498 6.467 4.735 29.94
6800 1,177 1513 6.495 4.761 29.71
6900 1,186 1527 6.524 4.787 29.49
7000 1,195 1542 6.552 4.813 29.26
7100 1,203 1556 6.579 4.839 29.04
7200 1,211 1570 6.606 4.864 28.81
7300 1,218 1584 6.632 4.889 28.59
7400 1,225 1598 6.658 4.914 28.36
7500 1,233 1612 6.684 4.938 28.14
7600 1,239 1626 6.709 4.963 27.91
7700 1,246 1640 6.733 4.987 27.69
7800 1,252 1654 6.757 5.011 27.46
7900 1,258 1667 6.781 5.035 27.24
8000 1,264 1681 6.805 5.059 27.01

 

 5 エネルギー最少弾道(EMT)と通常の弾道との比較

  ペイロード 800 [㎏] に対応する最大射程 6,527 [㎞] の弾道の高度及び速度を、同一射程を満足する EMTのそれらと重畳して、以下に示す。

図2-4 エネルギー最少弾道(EMT)と通常弾道との比較
Hwasong-14_EMT_Vo_Alt

 EMT と通常弾道の初速赤目盛)はそれぞれ、6.41 [km/s]及び 6.00 [km/s]で、EMT の方が、410 [m/s] 高いが、中点(弾道の頂点)では、それぞれ、4.00 [km/s] 及び 4.86 [km/s] で、EMT の方が、860 [m/s] 低くなっている。

 EMT と通常弾道は、同一射程6, 527 [km])を、それぞれ、1, 476 [s] 及び 1, 540 [s] で、飛翔しているから、それらの平均速度は、それぞれ、4.422 [km/s] 及び 4.238 [km/s] となり、EMT の方が、0.184 [km/s] (184 [m/s])だけは早い(飛翔時間にして、1分程度。比率にして、4 % ほど早くなるが、推定値としては無視できるオーダーである)

 

 6 Payload をパラメータにとって弾道を見る

図2-5 射程対弾道高
Hwasong-14_Range_Alt_Payload

 

図2-6 飛翔時間対弾道高
Hwasong-14_Time_Alt_Payload

 

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